第10位 臓器売買 人助けを大義名分に、金儲けを企てる臓器ブローカー。病人の弱みにつけこむ一方、貧しい人々を食い物にする彼らのやり口はまさにハゲタカ。惜しみなく金が注ぎ込まれる条件が整うなか、違法な臓器売買の取引額は年間2億ドル(約1000億円)にのぼるともいわれている。
ブローカーが臓器を入手するのはインドや中国、東南アジアなどの貧しい発展途上国。貧困にあえぐ人々の臓器を、日本円にして10万から50万で買い叩き、その50倍から100倍の値段で富裕層に売りさばく。つまり1回の取引での儲けが1000万円以上なんていうこともめずらしくないのだ。
第9位 金の採掘 年間、違法に採掘される金の取引額は23億ドル(約1800億円)。取引額がもっとも多いのはペルーで、同国における金の生産量の40パーセントは違法に採掘されたものだ。次いで、違法採掘が多いのはロシア、ウズベキスタン、マリ、ブラジル、アルゼンチン、パプアニューギニアなど。
莫大な利益をもたらすダイヤモンドや金などが産出される国では、昔からその所有権をめぐる紛争がつきもの。採掘に多くの人が血をながし、環境が破壊され、動物が犠牲になっているのは紛れもない事実だ。しかし、法の目をかいくぐり、いったん合法な金と混ぜ合わせてしまえば、足などつかない。違法な金は、毎年大量に富裕国に流れ着き、平然とショーケースに収まっているのだ。
第8位 材木の違法伐採 違法な森林伐採における年間の取引額は4.9億ドル(約4000億円)。東南アジアでは、やみくもな伐採による森林破壊が特に著しく、生態系への影響も深刻になってきている。破壊が進んだ裏には、暴利をむさぼり違法行為を繰り返してきたマレーシア系の伐採企業と、彼らを野放しにする国家の腐敗した政治背景がある。
「リンブナンヒジャウ社」はそんな悪名高き伐採企業の代表格。同社は地元警察や有権者を買収し、東南アジア諸国の森林地帯を支配。さらには脱税や、土地の所有者にたいする脅迫・暴行など、数々の悪行が報告されている。この犯罪企業の長であるティオン・ヒューキン氏の総資産額は35億リンギ、(約935億円)。同国の経済誌が昨年発表した富豪上位者リストに堂々のランクインを果たしている。
第7位 美術品の窃盗 盗難された美術品や文化財の被害総額は年間63億ドル(約5100億円)にも上るといわれる。現在でも、ピカソ551点、ゴッホ43点、レンブラント173点、ルノワール209点などなど、名だたる画家たちの作品の数々が闇のマーケットに出回っているそうだ。
なぜこれほどまでに多くの美術品が盗まれるのか? その答えはとてもシンプルだ。「ちょろいから」……。予算不足の美術館は警備が甘い上、美術品犯罪はつかまっても刑が軽い。
1994年にノルウェーのオスロ美術館から、ムンクの「叫び」が盗まれたときの様子がいい例だ。犯人は白昼堂々、梯子を使って窓から侵入、壁から絵をとりはずし、実にあっさりとこの名画を盗っていったそうだ。しかも、「手薄な警備に感謝する」とのメッセージを残して……。
第6位 密猟 密猟された野生動物や希少動物の取引額は、年間100億ドル(約8000億円)とも250億ドル(約2兆円200億)になるとも言われている。密猟の犠牲となるのは主にアフリカや東南アジアの野生動物たち。密輸先は例によって中国、ヨーロッパ、アメリカなどだ。ペットとして求められる場合もあれば、牙や毛皮など一部の部位のみを求める場合、さらにはグルメや漢方薬の材料として求められる場合など様々なケースがある。
特に絶滅が危惧されている動物はその希少価値と相まって、裏のルートでは信じられないほどの高値が付く。たとえばインドネシアのスマトラトラは、毛皮だけでも1千200万ルピア(約11万円)、剥製であれば、最高1億ルピア(約50万円)。さらに密猟の中継地点にたどり着く頃には、値段は倍に跳ね上がるそうだ。このため、法律で厳しく取り締まっても、摘発される事例は後を絶たない。
第5位 原油の不正取引 闇で取引される原油の総額は年間108億ドル(約8700億円)。その出所はロシア、サウジアラビア、イラク、ベネズエラ、メキシコ、ブルガリアなど実に広範囲に及ぶ。原油の闇取引を語る上で、欠くことができないのが、原油界の闇の帝王、マーク・リッチ氏の存在だ。もともと米国市場で先物取引に従事していた同氏は、第四次中東戦争、つまりオイルショックが勃発すると、自身の持つ中東のコネクションを利用して、イランから石油の密輸を開始。
さらにそれまで出所や買い手を明確にした上での受注生産が主流だった原油市場に、スポット(現物)取引を取り入れて利益を確定した。これにより市場に買い手の不明な原油が、公然と出回るようになったのだ。
この「買い手が不明な怪しい原油」こそが、原油の闇取引の実態だ。さらにリッチ氏はこの売上金をヘッジファンドに投入。投機的な売買で原油の価格を吊り上げ、巨額の富を築き上げたと言われている。
第4位 密漁 世界的に見て密漁が盛んなのは、東南アジアやアフリカ諸国。その取引額は年間113億ドル(約9100億円)に上り、インドネシアだけでも160万トン分の魚が違法に水揚げされている。それらの流れ着く先は日本、ヨーロッパ、米国、韓国、中国など。つまり我々の口にも運ばれているのだ。
発展途上国においては、漁業から得る税金は国の重要な収入源。生活苦の末に、密漁に手を染めるに者もいるが、その違反行為により、国の発展がさらに妨げられるという悪循環がここに発生している。
スキューバダイビングや、小型船を使った密漁、暫定水域を越えた外国船の侵入による被害など、日本の漁業が抱える問題も深刻だ。さらに、今年は大震災とそれに続く原発事故により福島、茨城の海産物の受けた被害は壊滅的。風評被害で同エリアの海産物が大きく値崩れするなか、漁業関係者の苦難は後を絶たない。
第3位 人身売買 東欧や、東南アジア、アフリカ、中近東など、現在も日常的に、かつ広範囲で行われている人身売買。結果稼ぎ出されている金額は年間316億ドル(約2兆5千億円)、被害者の数は全世界で250万人に及ぶそうだ。
ターゲットになるのは、貧困層や、避難民、ホームレス、子供などいずれも社会的弱者。そのほとんどが甘い言葉で誘惑されるか、もしくは誘拐、ときには実の親に売り飛ばされて、例のごとく富裕国へとへと連れてこられる。彼らを待ち受けるのは、性的搾取や、臓器移植、偽造結婚など、目をそむけたくなるような地獄の日々だ。 たいていは巧みに騙されて、不利な契約を結ばされているため、逃げ道もない。
人身売買はその勧誘から、移送、最終的な売却において、それぞれのネットワークに分けられて個別に行われているケースが多い。そのため足がつきにくく、資本も少なくてすむため、今もなお、闇取引の市場において1、2を争うシェアを占めているのだ。
第2位 偽札
中国、ロシア、台湾、インド、マレーシア、フィリピンなどで偽造される偽札の総額は年間で2500億ドル(約20兆円)。印刷技術を駆使して、新たな防止措置を取る傍ら、それを出し抜く偽造紙幣が現れるといった歴史が繰り返されている。
米ドルは特に偽札のターゲットになりやすく、なかでも有名なのが、北朝鮮が政府の認可のもと作ったと噂される偽100ドル札、「スーパーノート」。専門家でも識別が困難なほど精巧に作られており、現在でも世界各地に流通している。
しかし、製造元が北朝鮮だという決定的な証拠もないまま、最近ではアメリカの自作自演説まで浮上している。そんな疑惑を払拭するかのごとく、3Dなどの最新技術を駆使した新100ドル札が昨年度ついに登場。これで偽札犯罪とのいたちごっこにも終止符がうてるのだろうか? 今後の展開が見逃せないところだ。
第1位 麻薬 あらゆる犯罪市場のなかでもっとも規模が大きい麻薬。国境を越えて取引される麻薬の総額は、ヘロインなどのアヘン類やコカインだけでも、年間3000億ドル(約24兆円)超。
麻薬大国と呼ばれるアフガニスタンが、世界のアヘン生産の75パーセントを独占。ミャンマーやメキシコがそれに次ぐ。一方、コカインの生産を圧倒的に占めるのは、コロンビア、ボリビア、ペルーだ。コロンビアの犯罪組織、メデシン・ルテルを創立した故・パブロ・エスコバルは、世界でも最も有名な麻薬王であり、同時に最も凶悪な大富豪であった。
同組織の最盛期は、世界のコカイン市場の8割を支配し年間の収入は最大250億ドル。エスコバル自身の総資産額も90億ドル(約7200億円)に達し、世界で7番目の大富豪としてフォーブス誌に取り上げられたこともある。
贅の限りを尽くした豪華な暮らしぶりを満喫する一方、その人生は、政府や、敵対する他の犯罪組織から常に命を狙われる日々だったのは想像にかたくない。実際、エスコバルは44歳という若さで、射殺されている。
以上が、もっとも稼げる犯罪のトップ10リストだ。分ってはいたことだが、人間の欲望が犯罪を生み出していることに改めて気づかされる。もちろん、あらゆる密輸品や違法な品々が行き着く先の日本にも、その責任の一端があるのだ。犯罪や犠牲のない社会を築くうえで重要なことは、私たち一人ひとりが、物欲に頼りすぎない心の豊かさを得て、幸せに生きることなのだろう。それがいちばん難しいことなのかもしれないが……。
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